Criacao TALK

第1回:山田卓也さん  [アメリカ北米サッカーリーグ・タンパベイラウディーズ所属]

Criacaoが行っている世の中に感動を創造し続ける活動の一環として、さまざまな業界で活躍する“プロフェッショナル”の方々にインタビューをする「Criacao TALK」。

第1回目はアメリカ北米サッカーリーグ(NASL)のTampa Bay Rowdies(タンパベイラウディーズ)でプレーをする元日本代表の山田卓也選手。38歳という年齢になってもなお向上心を持ち、第一線でプレーを続ける秘訣とプロフェッショナルの定義とは。[2013.6.30]

突き詰めること。
全てに理由がある、そこを目的意識を持って突き詰められる人がプロなんだと思う。

山田さんにとってプロフェッショナルとは? 色々な定義があると思うけど、まず何事も突き詰めること。これは何もサッカーに限ったことじゃない。ひとつのことに理由や目的意識を持って全力で行動をする。 そうすると新しい発見や問題が見つかる。それを解決するためにまた全力で努力をして、また新しい発見がある。突き詰め続ける人がプロフェッショナルなんだと思う。 突き詰めることが大事だと? そうだね。プロサッカー選手の中でも突き詰めていない選手がいると思う。それができていない選手は、俺の中ではプロじゃないのかなと思ってる。お金をもらっている=世 間的にはプロだけど、それならサラリーマンもある意味プロでしょ。自分の目線だけでなく、周囲からどう見られているかという観点も大事。対価を得て、さらに高い意識で自分を高めている人が本当のプロといえるんじゃないかな。例えば、練習でやるミニゲームって楽しいよね。そのときに誰かに抜かれたときに『あいつはやっぱり上手いな~』じゃなくて、『何で抜かれたんだろう?』『どうやって抜いたんだろう?』って考える。そこで発見が見つかって自分の成長につな がるんだと思う。お金をもらっていなくても、プロのアスリートじゃなくても、プロフェッショナル呼べる人は世の中にたくさんいるからね。

世界一のコミュニケーションツールであるサッカーを通じて、世の中の人々に感動を与えたい。アメリカでもそれをやることが自分の仕事。

山田さんにとってプロサッカー選手とはどういう仕事だと考えていますか? 観客を楽しませる、人々を魅了する仕事かな。少年少女には夢を与えることができるし、人々を感動させることができる。それにサッカーは世界と繋がることもできるスポーツだと思う。 サッカーは世界で一番人気のスポーツでもありますよね? ルールもほとんどの人が知っているから、言葉が通じなくても簡単にコミュニケーションが取れるよね。音楽やダンス、他のスポーツも一緒。まぁ、言葉が通じればもっと伝わるかもしれないけど、スポーツの中でサッカーが一番のコミュニケーションツールであることは間違いないと思う。サッカーというスポーツに触れることによって世界中で沢山の繋がりや幸せが生まれると良いよね。 それはアメリカでも変わらない? アメリカでは、バスケット、アメリカンフットボール、アイスホッケー、野球の4大スポーツの人気が凄い。だけどそんなアメリカでもサッカーをしている子供達がたくさんいる。だからアメリカでプレーすることで、その子供達が『サッカーやっていてよかった!』と思えるようにしてあげたいよね。何より自分が今サッカーを通じて世界とつながることができる幸せを感じているしね。

プロになったのは好きなことをやり続けた結果。環境を作ってくれた周りの人に感謝している。

プロサッカー選手になったきっかけを教えてください。 高校を卒業する時にJリーグができたのが大きかった。当時はプロサッカー選手がなんたるかがわからない状況だったよね。自分はまずは大学に進んだ。そこでもっと上手くなりたい、相手に負けたくないって思いで続けていたら、誘いがあってプロになった。なろうと思ってなったわけじゃなく、好きなことを続けていた延長にプロがあったって感じかな。Jリーグができてなかったら、当然プロサッカー選手にはなれなかったよね。だから好きなサッカーを続ける環境を作ってくれた多くの人に感謝しないといけない。 プロサッカー選手になるにあたって不安はありましたか? 身近にいた人が活躍していたから、不安はなかった。例えば高校や大学の先輩だった林君(※注1)の存在もあった。1年目からヴェルディでレギュラーになって活躍していたし、日本代表でもプレーをしていたのは、自分の力に対する自信というか物差しになった。凄い遠くに行っちゃったなと思う半面、自分も近くにいるんだなと。 プロに入って、イメージとのギャップを感じましたか? ヴェルディには高校や大学時代の知り合いも多くいたから、イメージとのギャップも少なかったし、自分を見失わずにやれる環境だった。当時ヴェルディでレギュラーになれれば、日本代表に近づけると思っていたからヴェルディを選んだというのもあった。 プロサッカー選手としての失敗や挫折はあったのでしょうか? 自分が考えるうえで失敗や挫折はないかな。まぁ人によっては、日本のクラブから戦力外になったら失敗と思うかもしれないし、降格もそうかもしれない、試合に負けることも挫折になるのかもしれない。でも俺の場合、トライアウトを受けて、結果としてアメリカに行くことができた。そこで人間の幅が広がってまた成長できている。人から見たら挫折のように見えるのかもしれないけど、自分の中でプラスに感じているし、全てが良い経験と思っている。今でも俺、来年どこでサッカーやってるんだろうってワクワクするよ。 では成功体験はありますか? 直近でいえば去年チームがNASLで優勝したことかな。フルシーズン本気で戦ってきて、良い仲間とともに勝ち取れた優勝だったから最高だった。自分のパフォーマンスもシーズンを通していいものだったと思うしね。でも怪我で最後の試合でプレーできなかったのは悔しかった…。 長く選手を続けられている秘訣は? やっぱり意識を持つこと、怪我をしないこと。まず大きな怪我をしなかったから、ここまで長くできたと思っている。親に与えてもらった体のおかげってのもあると思うよね。自分の体は自分がいちばんわかっていないといけない。だから体調や調子が悪ければしっかり休む。食事もそう。プロだから節制は当たり前。じゃないと怪我をしやすくなるし、プレーも安定しない。あとファウルをされて怪我をするって、相手のせいにしがちだよね。でも突き詰めれば、周りや相手の状況が 見えていなかった自分が悪い。だから怪我は自分の問題だと考えるようにしている。まぁ、今怪我でプレーできていない俺が言うのも説得力があるかわからないけどね…(笑)。 オンとオフの切り替えはどうしていますか? オンとオフのバランスが大事。オフは心身ともにリフレッシュすべく外に出るようにしてるかな。一方でサッカーを完全に忘れることはないかもね。だからスノーボードに行こうって誘われたら怪我を考えて躊躇するし、50m競争しようって言われたら嫌だよね(笑)。 でもちょっとテニスをするぐらいなら楽しいし、ビーチ行って歩いたり、カヌーをしたりするとちょっとしたエクササイズや気分転換になるし、本を読んだり映 画を観たりもして自分のやりたいことをやっている。心身のリフレッシュは大事。メンタルがサッカー選手として50%くらいは占めてると思うから、そこはう まくコントロールするよね。その上でもちろんプロサッカー選手として節度ある行動を心がけているよ。

組織の中で自分の役割を考え、全力で取り組めば、自分も周りも成長できる。

サッカーはチームスポーツですが、チームスポーツとして意識していることは? 全ては自分に返ってくること。例えば、味方に良いパスを出せば自分にも良いパスが帰ってくる可能性は高いし、周りのレベルアップが自分の成長につながる。前に自分が所属していたチームでは、ライバルである同じポジションの人と1年間しゃべらないって選手もいた。でも、考え方を変えてお互いに切磋琢磨してレベルアップをすれば、チーム力もUPして試合も勝てて、結果も出て給料も上がってってことになると思う。同じチームである以上、みんなで高め合っていくことが大事。例えば、ヴィッセル神戸でプレーしている相馬(※注2)なんかは、ヴェルディ時代の練習後に俺や三浦淳(※注3)によく1対1を挑んできた。『2人に勝ったら代表に近づける!』ってね。そういう目的意識を明確に持って全てを超えていこうとする姿勢がとても大事。 組織の中で自分がどうあるかが重要ということですね? 試合に出られないから負けちゃえなのか、切磋琢磨した仲間達を信じて勝って欲しいと思うのか。キャリアを考えた上でも、優勝したチームの控えにいるか、そこそこのチームで自分が出ているかどちらがいいかは難しいよね。その時のメンタルにもよるけど、いまの自分の立場でチームに貢献できることを精一杯やることが自分の成長になると俺は思っている。例えば、新人の若手がどうしたらチームに貢献できるか考えてみる。褒めることでモチベーションを上げることもできるし、アドバイスをして能力を引き上げることもできるよね。周りのレベルが上がれば、自分のレベルもあがるという意識を持っている。自分はベテランということもあるし、チーム・監督に何を求められているか、目的に対して色んな経験でチームに貢献することが大事。日本のあるチームではFWとしてプレーすることがあった。なぜ監督が自分をそこで起用したのかを考えたとき、自分の能力的にドリブルで相手を何人も抜くとか、1試合に何点も決めるとか、そんな役割は求められていないと考えた。そこでもう1人のFWを サポートするとか、攻撃の起点になるとか、前線での守備とか自分ができることを精一杯やる。それでチームが勝てれば自分の役目は果たしていると思う。アメ リカでは、練習のときに自分が率先してゴールを運ぶとか後片付けをするとかやっていた。すると若手の選手達はそれを見ていて、日本以上に気を使って俺より も先にやろうとする。そこでチームの一体感が出てくるし、チームのため人のために何ができるか考えるようになるんじゃないかな。 そのような考えにたどりついたのはいつですか? いつかは覚えてないけど、所属したチームによって色んなポジションを経験しながら、求められる役割も変わったし、キャプテンもやったりした。その都度、求められていることを話したり考えたりしたら自然とそうなってた。

プロは誰もが憧れる夢であらなければならない。それによって個人の行動に責任感が出る。
プロが夢のあるものにならなければ、セカンドキャリア問題はなくならない。

日本ではサッカー選手のセカンドキャリアについての問題が多くあります。山田選手は、プロサッカー選手のキャリアについてどのように考えていますか? まずはその選手のマインドが一番じゃないかな。プロになったからゴールじゃないと思うよね。そういう選手は根本のところでプロになっちゃいけない。 目的意識も重要になってきますね。 そこからどんな選手になるか、こんな経験をしたいとか目的が重要なんだ。それは普通の仕事とかでもそうでしょ? 大学もただ入ればいいじゃなくて、将来的に○○がやりたくて△△大学の□□学部にいく、将来こんな夢があるからこの会社に就職する、みたいな目的がないと人の成長は止まってしまう。今のアメリカでのチームのメンバーみんな自分が将来どうなっていたいか、明確に語れるよね。アメリカでは大学に入るときに将来のキャリアも考えて大学や学部、学科を選ぶって言うし、そういった目的意識はとても大事。 個々人の意識によってキャリアも充実させることができると? でも選手だけの責任にはできない。いまのサッカー界を取り巻く環境にも変えていけることは少なからずあると思う。 Jリーグのシステムがセカンドキャリア問題をつくってしまったということですか? Jリーグができて20年。今では40クラブに増えて、確かにクラブの地域密着における裾野の拡大はできた。でもそれによって、誰でもなれるってことではないけどプロになれる人数が増えすぎてしまった。そして戦力外になってセカンドキャリアに悩む人が増えてしまったよね。 来年にはJ3ができます。 Jリーグを否定するわけじゃないけど、自分の考えとしては一握りの人しかプロになれないほうが、夢になるし憧れるんじゃないかな。お金をもらえるっていっても、何百万円じゃ憧れにはなりづらい。でも数億円とかをもらえれば憧れるし夢になる。そうすれば人に夢を与える仕事をしている責任感も出てきて、自分の事を突き詰められるはず。結局はマインドの部分につながってくるんだけど、プロサッカー選手が夢のあるものにならないと、セカンドキャリア問題はなくならないと思う

サッカーという素晴らしいスポーツを日本・アメリカはじめ色々な人に伝えていきたい。
好きなことを仕事にできる幸せを実感してもらいたい。

今後の目標はありますか? たくさん国がある中で、せっかくアメリカにいるわけだから、この機会を無駄にせずに良い経験をさせてもらったサッカーを世の中に伝えることをしていきたい。アメリカでは4大スポーツの壁もあるけどね。アメリカに限らず日本でもどこでも、沢山の人達に大好きなサッカーというスポーツの素晴らしさを伝えていきたいね。 サッカー選手を目指す人達にメッセージをお願いします。 プロになったから目標達成じゃない。そこからどうするかが大事。自分に厳しく突き詰められるプロフェッショナルになれないなら、プロサッカー選手にはならないほうがいい。そんな人にはチャンスはこないし、やれるという自信をもっていないと絶対に失敗する。これはどんな仕事にも言えることだと思う。だから本当にプロサッカー選手になりたい人は頑張って欲しい。そして好きなことを仕事にできるっていう幸せを実感して欲しいね。


注1=林健太郎選手:ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ1969)やヴァンフォーレ甲府で活躍。J1通算311試合19得点、J2通算58試合出場4得点。日本代表2試合・0得点。

注2=相馬崇人選手:東京ヴェルディ1969、浦和レッズでプレー後に海外移籍。ポルトガル1部マリティモ、ドイツ2部のコットブスでプレー。その後ヴィッセル神戸に移籍して日本に復帰。現在も同チームにてプレー中。

注3=三浦淳宏選手:フリーキックの名手として横浜フリューゲルス、横浜FM、東京ヴェルディ1969、ヴィッセル神戸、横浜FCで活躍。J1通算323試合出場45得点、J2通算109試合出場20得点。日本代表ではシドニー五輪などに出場。日本代表25試合・1得点。

編集後記

インタビューを通じて、“プロフェッショナル”とは何か、を本質的に考えさせられる素晴らしい機会となった。コメントされている一つ一つを実際に体現され、4日間行動を共にさせていただいた中で、全てにおいてプロフェッショナルであり、チャーミングである山田さんに魅了された。人としてのあり方、プロフェッショナルとしてのあり方、本質が詰まっている言動、自分に厳しくも周りに対して愛を持って接する山田さんの人柄に、チームメイトや現地フロリダのファン、現地滞在の日本人の方々が心から応援している姿にプロフェッショナルを感じた滞在となった。サッカーから原理原則を学び、サッカーを軸に様々な領域でも活躍されていく山田さんから今後とも目が離せない。

PROFILE

山田卓也(やまだ・たくや)
1974年8月24日生まれ、東京都出身。178cm、77kg。武蔵丘FC-町田市立鶴川第二中学校-桐蔭学園高校-駒澤大学-ヴェルディ川崎/東京ベルディ1969-セレッソ大阪-横浜FC-サガン鳥栖-FCタンパベイ/タンパベイ・ローディーズ。J1通算274試合・23得点。J2通算74試合5得点。日本代表4試合・0得点。本職はMFながら、DFやFWも高いレベルでこなすユーティリティープレーヤー。2012年の北米サッカーリーグではリーグ唯一の全28試合フルタイム出場を記録し、年間ベスト11に選出され、見事リーグ優勝も果たした。チームの中心選手として今期も活躍が期待されている。